愛知建築士会の講座「伝統木構法」 |
講師は「伝統木構法」や古民家再生を得意としている東京の建築家の松井郁夫さんです。
テーマは「木組でつくる日本の家シリーズ(1)」です。
「伝統木構法」とは、「木造の在来工法」と混同されそうですが、全く違うものです。
「伝統木構法」は古来より、日本に伝統的に受け継がれてきた、木組みによる構造です。
「在来工法」という名前は、もとは、明治になり、レンガ造などの「外来工法」が欧米から入ってきた時に、日本にもともとあった工法という意味で付けられたのですが、今や、「在来工法」=「日本にもともとあった工法」ではなくなっています。
例えば、柱と柱の間に斜めに設置する「筋交い」は、もともと日本にあったものではなく、明治になり、欧米からやってきた建築技術者が、自分たちの国で、強風に耐えるために使われていた、斜めの材を、日本でも使うように指導したのが始まりです。
欧米では、地震はほとんどないので、風に耐えることだけを考慮すればよかったのです。
しかし、日本では地震があります。
古来より、日本では「貫」によって地震に耐えてきました。
柱と柱を何本も水平に連続貫通するように、使われてきたのが「貫」です。
地震に耐えるのではなく、「柳に風」のようにしなやかに、家全体が揺れて、地震エネルギーを受け流すのです。
E-ディフェンスという国立の施設で行った、土壁に貫構造の実大実験の映像を見せてもらいました。
大きな振動架台の上に実物の家を建てて(その建物の設計を松井さんがやりました)、揺らすのです。
それによると、建築基準法の求める耐震性は楽にクリアすることが分かりました。
阪神大震災の地震波を与えても、一部の損壊はありましたが、倒壊はしませんでした。
倒壊しないということは、命が助かるということです。
今のままでは、「伝統木構法」の技術と人がなくなってしまうことに危機感を抱いた人たちや政府が、「伝統木構法」のよさを見つめなおし始めたところです。